伊豆に暮らす

伊豆に暮らす 〜健康暮らし応援隊〜絆

不安の連鎖がつらい身体の症状をまねく… パニック障害

ある日、突然に、発作的な身体の症状にみまわれ、また強い不安感に襲われるパニック障害。
日本人100人中、3〜4人の割合で発症するといわれ、
誰にでも起こりうる病気にもかかわらず、まだ充分に理解されていないのが現状のようです。
パニック障害とはどのような病気なのか、その正体に迫ってみましょう。

パニック障害は、こんな病気です

例えば、学校の試験が控えていたり、重要な会議でスピーチをしなければならない時などに
胸がドキドキしたり、汗ばんできたりといった経験は、どなたにもあるでしょう。
これは、不安や恐怖を防御するために身体が起こす正常な反応で、原因となる問題が解消すれば元の状態に戻ります。
パニック障害は、こうした思い当たる不安材料がない(あるいは不安を自覚していない)にもかかわらず、
身体が誤って防御反応を起こし、それが激しい症状となって現われて、発作的に何度もくり返される病気です。
パニック発作とよばれるその症状は、場所や時間を問わず、また前ぶれもなく突然に現われます。
通勤途中の電車の中や、仕事中の職場、あるいは買い物帰りの道端など、発症する状況はさまざまです。
また症状も多岐にわたりますが、一般的にはこれらが複数重なって起こり
その場にしゃがみこんでしまうほどのつらさを感じます。
このように、突発的に激しい症状が起こるため、
『何か重大な病気ではないか、このまま死んでしまうのではないか』といった
強い恐怖感に襲われるのも、パニック発作の特徴です。
発作は、最初の10分間をピークに、通常30分から1時間もすれば自然に治まっていきます。
身体に何らかの病気があって起きるわけではないので、
いくら病院で検査しても、身体的にはまったく異常が認められません。
このパニック発作は、くり返し起こることが多いため、そのつらい経験から
「また発作が起きたらどうしよう」という強い不安感を抱くようになります。これを予期不安といいます。
例えば、電車の中でパニック発作が起こった人は、同じ電車に乗っただけで予期不安が高まり、
それが引き金となって、実際にパニック発作を誘発してしまいます。
つまり自ら発作の原因を作ることになり、次はさらに不安が強くなるという、悪循環をくり返してしまうのです。
さらに予期不安は、
「今度は死んでしまうかもしれない」
「取り乱したりしたら見苦しい」といったマイナスの感情を生みだします。
そのことでますます自分を追い込むこととなり、これもまた発作を引き起こす誘因となります。
パニック障害という病気が厄介なのは、実はこの予期不安を起こさせることにあるのです。
さらに、予期不安が高じてくると、今度は広場恐怖をまねくことになります。
広場恐怖とは、もしパニック発作が起こった時に困るような(逃げ場がない、助けてもらえない)場所に恐怖感をもち
その場所に行けなくなったり、乗り物に乗れなくなったりすることをいいます。
電車や車、エレベーター、飛行機の中、人ごみ、デパートや映画館、美容院などが対象となりやすい場所です。
パニック障害の病状が進行するにつれ、広場恐怖も深刻になっていきます。
必要があれば外出できていた人が、次第に一人では外に出られなくなり、家の中に引きこもりがちになってしまいます。
さらにこうした状態が長く続くと、気分が落ち込み、意欲が低下して、うつ状態をまねくようになります。
事実、パニック障害の患者さんの多くが、うつ病を併発し、日常生活にさまざまな支障をきたしているのです。
このようにパニック障害は、はたからは想像できないほど、本人にとっては大変な苦痛を伴うものです。
しかしながら、正しく理解し、あせらずに治療を続けていけば、
必ず症状から立ち直り、以前と同じような日常生活を送ることができます。
医師や周囲の人の協力を得て、前向きに対処していくことが、何よりも大切です。

パニック障害には、こんな治療法があります

パニック発作は、時間の経過とともに治まり、
また検査しても異常がみられないため、放置されるケースが少なくありません。
しかし、早期に治療を開始すれば、重症化するのをくい止められ、
何より発作のつらさを一日でも早く解消することができます。
思い当たる症状があったら、早めに精神科や心療内科などで、専門的な診断を受けるようにしましょう。
パニック障害の主な治療法としては、発作を抑えるための薬物療法と、
不安や恐怖感を自分でコントロールするための心理的療法の2つがあげられます。

■薬物療法
パニック障害が起こる原因は、まだはっきりとわかっていませんが、
脳の働きに関わっている神経伝達物質「セロトニン」が正常に作用せず、
脳の機能に一過性の異常が生じた結果、発症するものと考えられています。
このセロトニンの作用を改善し、発作を抑える効果があるとされているのが
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という薬です。
SSRIは抗うつ薬の一種で、副作用も少なく、パニック障害にたいへん有効ですが、
効き目が現われるまでには数週間を要します。
人によっては、最初の頃に、吐き気や下痢、眠気などを生じることもありますが、
飲み続けることで徐々に発作の症状が改善され、不安や恐怖心が緩和されていきます。
また、発作が治まったあとも、再発を予防するために、一年程度は服用を続ける必要があります。
これとともに、効き目が早く現われる抗不安薬も用いられます。
症状に応じて毎日服用するほか、発作時の緊急用としても役立ちます。
さらに、薬を持っていることで不安がやわらぐという、心理的な効果も期待できます。

■心理的療法
薬物療法とともに、不安感や恐怖感を自分でコントロールできるよう、併せて心理的療法が行なわれる場合もあります。
その一つ認知療法は、病気のメカニズムや治療法を正しく理解することで、
パニックに陥らないような気持ちを養うというものです。
発作が起こりそうな時に、「あっ発作だ。どうしよう」と慌てるのではなく、
「死ぬことはないし、薬もあるから大丈夫だ」と、
受け止め方を修正することで冷静に対処できるようにしていきます。
また、不安や恐怖を感じている場所や状況を経験し、少しずつ慣れながら広場恐怖を克服していくのが、曝露療法です。
これは行動療法の一種で、例えば電車に乗れなくなってしまった人の場合など徐々に乗れるように練習していきます。
これらの心理的療法は、かかりつけ医のカウンセリングや指導の元で、段階的に行なわれます。

パニック障害にはこんなふうに立ち向かおう

パニック障害は必ずよくなる病気ですが、発作が抑えられ、
薬も飲まなくてすむようになるまでには、ある程度時間が必要です。
そのため、あせらずに「いつか時間が解決してくれる」ぐらいの大らかな気持ちで、
じっくり治療に取り組むことが大切です。
パニック障害と診断されても、決して悲観的にならず、この病気を前向きにとらえていきましょう。
またパニック障害の患者さんには、周囲の心強いサポートが何よりの味方です。
家族や友人、同僚の方は、正しい理解といたわりの心で、暖かい手をさしのべてください。

パニック障害を克服するために

患者さんへ

死をまねくような重病ではないこと、治療によって必ず回復することなど、パニック障害を正しく理解しましょう。
発作が起こっても慌てず、気持ちを落ち着かせる努力をしてみましょう。
思ったことは何でもかかりつけ医に話し、納得するまで相談しましょう。
発作が治まってきても、自分の判断で治療を中断しないようにしましょう。
充分な休養をとり、規則正しい生活に努めましょう。

周囲の人へ

発作の時の苦しさや心細さ、また気の持ち方で起こる病気ではないことなど、患者さんのつらさを理解してください。
発作が起きたら、側でやさしく声をかけ、身体をさするなどして、不安を取り払ってあげてください。
診察に同行したり、外出の同伴をするなど、治療のためのお手伝いをしてあげてください。