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甲状腺機能障害とバセドウ病

「身体のどこにあって、どんな働きをしているの?」
甲状腺と聞いてピンときた方は、それほど多くないかもしれません。
あまりなじみのない臓器ですが、
何らかの障害を抱えている患者さんは約500万人といわれ、甲状腺の病気は意外に身近なものなのです。
今回は、その代表的な疾患、バセドウ病についてみていきましょう。

まずは甲状腺について知っておきましょう

甲状腺の位置 甲状腺は、首の前側、のどぼとけのすぐ下あたりにあり、
蝶が羽根を広げたような形をしています。
重さが約20gと、それほど大きな臓器ではないため、
通常の場合は、首に触れてもはっきりとわかりません。
ここで甲状腺ホルモンを作りだし、血液中に分泌しています。
甲状腺ホルモンには、
身体全体に作用して、新陳代謝を活発にする働きがあります。
食べ物として摂り入れた栄養を、
さまざまなエネルギーとして利用しやすいようにしているのです。
また、脳や心臓、肝臓などの働きを活性化させたり、
血流や発汗の量、体温などをちょうどよい状態に調節する役目も担っています。
いわば「身体を元気にする」ホルモンといってよいでしょう。
さらに子どもの時期には、骨の発育や知能の発達を促すという重要な役割もあります。
ところで、この甲状腺ホルモンの分泌は、脳下垂体という器官がコントロールしています。
血液中の甲状腺ホルモンが少なくなると、
下垂体から甲状腺に向けて、ホルモンを作りなさいと命令する甲状腺刺激ホルモンが送られます。
甲状腺は、その指令を受けとって、甲状腺ホルモンを作り、分泌しているのです。
甲状腺には受容体とよばれる鍵穴があって、そこに甲状腺刺激ホルモンが入りこむことで、
甲状腺ホルモンを分泌するスイッチが入る仕組みになっています。
このようにして私たちの身体は、血液中の甲状腺ホルモンの濃度を一定に保ち、元気な状態を維持しているのです。

甲状腺機能障害には2つの病態があります

甲状腺機能障害 ところが、何らかの原因で甲状腺の機能が異常をきたすと、
コントロールされていた
甲状腺ホルモンの分泌量に狂いが生じてしまいます。
1つめのケースは、甲状腺ホルモンが不足してしまう状態で、
甲状腺機能低下症といいます。
いわば身体中から「元気がなくなる」のが症状の特徴です。
甲状腺機能低下症の大部分は、橋本病を原因として起こります。
もう1つは、甲状腺ホルモンが過剰に増えてしまうパターンで、
甲状腺機能亢進症とよんでいます。
「異常に元気がみなぎり」
身体が常に運動しているのと同じような状態になります。
こちらもさまざまな病気が原因で起こりますが、
約90%はバセドウ病によるといわれています。
橋本病とバセドウ病は、
甲状腺ホルモンの分泌量がまったく逆になるため、
全身に現われる症状も対照的。
まさに正反対の特徴をもった病気といえるのです。

バセドウ病を正しく理解しましょう

なぜ起こるか

私たちの身体には、細菌やウイルスなどから身を守るため、免疫機構が備わっています。
外から異物が侵入すると、それを攻撃する抗体を作り、外敵から防御する仕組みです。
ところが、このシステムが誤って作動すると、
自分自身の身体を異物だと認識し、抗体が作られて攻撃をしかけてしまう場合があるのです。
その結果として起こるさまざまな障害を、自己免疫疾患といいます。
バセドウ病も、この自己免疫疾患の1つです。
免疫の異常で、甲状腺に対する特殊な抗体が作られ、
それが受容体にはまって常に甲状腺を刺激し続けます。
そのため、甲状腺刺激ホルモンの指令とは関係なく、
過剰に甲状腺ホルモンが分泌され、さまざまな身体の不調が現われてくるのです。
ちなみに患者数は、女性が男性の約5倍。
10代後半から20代の若い女性に多い病気です。

全身におよぶ症状

バセドウ病の症状 バセドウ病によって
甲状腺ホルモンの分泌量が増えると、
新陳代謝が盛んになって、
エネルギーの消費が高まります。
その分、全身のさまざまな臓器に過度の負担がかかり、
右図のような症状が現われるようになります。
初期の頃は
以前よりもエネルギッシュになった感じがしたり、
はたからも元気そうに見えるため、
患者さん自身が
病気に気づかないケースが多いようです。
また症状によっては、
心臓や胃腸の病気、
自律神経失調症などと取り違えやすく、
すぐには気づきにくい病気だといえます。
症状のなかでも、バセドウ病の特徴的なものとしては、首のはれと目の変化が挙げられます。
首がはれるのは、障害を受けた甲状腺が大きくなるためですが、のどの痛みやつまりなどはありません。
一方、目のほうは、眼球が大きく飛びだしたようになることがあります。
また、まぶたの筋肉が引っぱられたり、
眼球を動かす筋肉が肥大して、驚いたときのような目の表情が現われたりします。
ただし、このような目の異常が認められるのは、患者さんの20〜30%程度です。

検査

バセドウ病を診断するためには、血液検査を行ない、次の項目について調べます。

甲状腺刺激ホルモンの量 激減

甲状腺ホルモンがすでに過剰になっているので、
ホルモンを作るように指令をだす必要がなく、かなり低い数値になります。

甲状腺ホルモンの量 増

特殊な抗体の影響で多量に分泌され、基準値を大きく超えます。

抗体の有無 陽性

特殊な抗体そのものの有無を調べます。

治療法

バセドウ病の治療には3つの方法があり、
患者さんの症状やライフスタイルに応じて、医師と相談のうえ決定していきます。

薬物療法

バセドウ病の基本的な治療法で、甲状腺ホルモンが作られるのを抑える薬(抗甲状腺薬)が用いられます。
血液検査で効果を確かめながら、適切な薬の量を見極め、一般には2〜3年間、継続して飲み続けます。
患者さんによっては、かゆみ、発疹などの副作用が起こることがあります。

アイソトープ療法

アイソトープ(放射線ヨード)を使い、甲状腺の一部を破壊し、ホルモンの分泌を抑える治療法です。
患者さんはアイソトープの入ったカプセルを飲みます。
体内に入ったヨードのほとんどは甲状腺に集まるので、
放射線ヨードも甲状腺に取りこまれ、そこで放射線を発して徐々に細胞の数を減らすのです。
放射線といっても量は少なく、身体に害を与えることはまずありません。
ただし、妊娠中や授乳している人には適しません。

手術療法

一部を残して甲状腺を切除してしまい、結果的に分泌されるホルモンの量を減らすというものです。
再発が少なく、確実に治療効果が得られるのが長所ですが、
入院が必要で、手術の痕が残るケースもまれにあります。

※アイソトープ療法と手術療法では、
残った甲状腺で充分なホルモンが作られず、逆に甲状腺機能低下症になることがあります。
その場合は、甲状腺ホルモン薬の服用が必要になります。

バセドウ病は決して恐ろしい病気ではなく、
適切な治療を続けていけば、制約のないごく普通の生活を送ることができます。
気づきにくい症状ですが、少しでも思い当たる人は、
甲状腺外来などの専門医を受診するか、またはかかりつけ医に相談してみましょう。