伊豆に暮らす

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胃がんに打ち克つ時代

ひと昔前に比べ、治癒率が格段に上がり、今や治るがんとなった胃がん。
しかし、依然として患者数は多く、死亡率も、減少しているとはいえ決して低くはありません。
胃がんという病気に立ち向かうには、患者さんも病気や治療法の知識をもつことが大切です。
今回は、そんな胃がんの治療法、そして予防はできるものなのか、くわしくみてみましょう。

恐れず向き合おう 早期治療で治るがんに

かつて、胃がんといえば、罹患率(かかる確率)・死亡率ともにがんのなかでトップでした。
そのような状況から、日本は胃がんの研究において世界でもトップレベルとなり、
診断・治療がめざましく進歩しました。
その結果、罹患率は緩やかに減少、死亡率はそれ以上に大きく減少しています。
つまり、胃がんになっても治るケースが多くなり、胃がんは「治るがん」といえるようになってきたのです。
死亡率が減少してきたのには、治療法のレベルアップはもちろんですが、
検診で、早期のうちに発見できたケースが増えたことも大きく影響しています。
診断技術の進歩とともに「日本人には胃がんが多い」という意識が浸透し、検診を受ける人が増えたのだと思われます。
このように、胃がんの治癒率(治る確率)が高くなったのは、早期発見・早期治療のケースが多いためです。
胃がんの治療は、進行度(=ステージ)によって違います。
胃がんに打ち克つには、早期がんか否かということと、適切な治療法を選択できるかの2点が、カギとなります。
胃がんの進行度については、患者さんにもある程度の知識があると、治療に役立ちます。
それによって、医師の説明がより理解しやすく、納得して治療に取り組むことができるのです。

知っておきたい胃がんのステージ

胃がんの深さと進行度 胃壁は、上図のように6つの層でできています。
胃がんの多くは、胃の内部の表面である粘膜内に発生し、そこから徐々に胃壁の深く、漿膜へと拡がっていきます。
これを浸潤(しんじゅん)といい、胃壁のどの層まで浸潤しているかという深さを[T]で表わします。
1〜4の数字が大きくなるほど、深く浸潤しています。

胃がんの深さと進行度 また、がんの進行度は、
深さだけでなく
転移の範囲からも判断します。
胃がんはリンパ節に転移することが多く、
転移の有無だけでなく、胃の周囲の
どのリンパ節に転移したかによっても、
治癒率が変わってきます。
この転移の状態を[N]で表わします。
0〜3の数字が大きくなるほど、
胃から離れたリンパ節に転移しています。

この[T]と[N]をあわせて決められる胃がんの進行度(=ステージ)が上表で、IAからIVに分けられています。
IからIVになるほど、またAよりもBのほうが、がんが進行していることを表わします。
がんの性質には、治りやすいものとそうでないタイプなどもあり、一概にステージだけで治療法を決められませんが、
ステージが同じであれば、治癒率もほぼ同じと考えられます。

胃がんが見つかったら… おなかを切らない手術もある

胃がんの治療は、手術が中心になります。手術法は、大きく分けて3つあります。

内視鏡手術

内視鏡(胃カメラ)検査の要領で、口から胃の中に入れた特殊な内視鏡で、がんの病変を取り除きます。
内視鏡的粘膜切除術の他に、
内視鏡につけた特殊なメスで病変を切り取る、内視鏡的粘膜下層剥離術もあります。
軽い麻酔をかけて痛みを最小限におさえ、おなかを切らずに治療ができるので、
次のようなメリットがあります。
 ・身体にかかる負担が小さい
 ・手術後の後遺症がほとんどない
 ・入院期間が短い
しかし、手術後に取り残しや転移が見つかる危険性もあるので、
胃がんのなかでもごく早期(IA)のがんで、大きさが2cm以下というような条件を満たさないと、
原則としてこの治療法は適応しません。
他にも、転移しにくい性質のがん、内視鏡で見えやすい場所にある、潰瘍ができていない、
などの条件もクリアしなければ、行なえないことがあります。

腹腔鏡下手術

腹部に数か所、1cm程度の穴を開け、
そこから内視鏡の一種である腹腔鏡や、メスを挿入して行なう手術です。
切開する範囲が小さいので、
 ・傷が小さく目立たない
 ・手術後の痛みが少ない
 ・体力の回復が早い
 ・開腹手術に比べて腸閉塞を起こしにくい
などのメリットがあります。
一方で、手術にかかる時間は開腹手術より長くなります。
内視鏡手術がむずかしいケースでも対応できますが、
取り残しなどが起こる危険性は開腹手術より高くなります。
また、腹腔鏡下手術には、熟練した技術が必要ですが、
経験を積んだ医師はまだ多いとはいえません。
そのため、どの医療機関でも行なっているという手術ではありません。
現状では、臨床研究レベル(試験的)で行なわれている方法だということも、
選択の際に考慮する点ですが、今後増えていく可能性がある手術です。

開腹手術

最も多く行なわれている手術で、なかでも胃の一部を温存する方法(定型手術)が一般的です。
しかし、がんが胃の上部にあったり、胃全体に拡がっている場合は、
リンパ節も含めて全摘出が必要になります。
さらに、胃の外側までがんが転移していれば、その臓器を切除・摘出します(拡大手術)。
胃を摘出する時は、同時に、食道と腸をつなぐ手術(再建手術)も行ないます。
開腹手術はさまざまなケースに対応できるのがメリットで、
可能な限り胃を温存する「縮小手術」も増えています。
胃がんの場合は、化学療法、いわゆる抗がん剤の治療だけでは、がんを完全に治すことはできません。
しかし、手術の後で再発防止のために投与したり、
逆に、進行がんの手術の前に投与して、できるだけがんを小さくすることでは、効果を上げています。
抗がん剤も研究が進み、よく効く薬が開発されています。
ただし、化学療法には多かれ少なかれ副作用があり、
効果には個人差があることも理解して治療に取り組まなければなりません。

症状はなし? 検診が最も有効

胃がんの治療法がいくら進歩したといっても、進行してしまったがんには、手のほどこしようがない例もあります。
「胃がんになれば、すぐわかるだろう」と思われがちですが、
胃がんには、とくに早期のうちは、症状がほとんどありません。
かなり進行してからでも、無症状の場合があるのです。
一方で、早期のうちに胃の不快感などが現われることもあり、この場合はある意味、幸運だといえます。
しかし、そこで放置してしまえば元も子もありません。
胃がん特有の症状というのはないので、胃の不調を感じることが多い人は、がん検診を受けることをお勧めします。
日本人の胃がんは、昔に比べれば少なくなりましたが、世界のなかでは、まだまだ罹患率が高いのが現状です。
その理由のひとつとして、塩分の摂りすぎがあります。
食塩は胃の粘膜を傷つけるので、胃がんの誘因となります。
そして、喫煙率が高いことも原因と考えられます。
さらに、慢性胃炎を誘発するヘリコバクター・ピロリ菌の感染者が東洋人に多いことから、
ピロリ菌も胃がんの下地を作ると思われます。
胃がんの予防については確実な方法がないのですが、
これらの危険因子を排除し、定期的に検診を受けることが最も有効です。
また野菜・果物の充分な摂取が効果的といわれています。
胃がんになる危険がまったくない人はいませんが、胃がんはこれまでほど怖い病気ではなくなりました。
高齢になるほど罹患率が高くなっているので、40歳を過ぎたら毎年がん検診を受けましょう。