伊豆に暮らす

伊豆に暮らす 〜健康暮らし応援隊〜絆

高齢社会で急増する アルツハイマー病

脳の働きが著しく低下し、日常生活に大きな支障をきたす認知症。
現在、患者さんの数は約170万人といわれています。
その最大の原因がアルツハイマー病で、患者さんの半数以上が、この病気によって認知症を発症しています。
アルツハイマー病とはどのような病気なのか、またどのような対策があるのか、
最新情報をまじえて詳しく見ていきましょう。

アルツハイマー病という病気

脳の模式図 以前、映画で若年性のアルツハイマー病が採りあげられ、
世間の注目を集めましたが、元来は加齢と深い関わりがあり、
65歳以上の人に起こりやすい病気です。
脳の神経細胞が障害を受けて死滅し、
その数が滅ってしまうことで、脳全体が萎縮していきます。
とくに記憶をつかさどる海馬と、
知的活動に関係する大脳皮質が、
著しく小さくなっていくのが特徴です。(右図)
したがって、
まず現われる症状は、もの忘れ(記憶障害…A)です。
人は誰でも年齢とともに忘れっぽくなり、
例えば朝食に何を食べたかを忘れてしまう、というようなことがありますが、
これはいわば「単なるもの忘れ」で、心配はいりません。
しかしアルツハイマー病の場合には、朝食を食べたこと自体、
つまり体験のすべてをスッポリ忘れてしまい、その程度には格段の差があります。
また、本人にはもの忘れをしている自覚がないのも、大きな特徴です。
何度も同じことを聞く、あるいは言う、物をしまった場所が頻繁にわからなくなる、などの症状もよくみられます。
病気が進行するとさらに、日付が不確かだ、自分のいる場所がわからないなど、
身の周りの状況認識が悪くなる症状(見当識障害…B)が起こってきます。
また、料理の手順がわからなくなる、簡単な計算ができないといった、判断力の低下(…C)も顕著になってきます。
これらA〜Cは中核症状とよばれ、
アルツハイマー病の患者さんには必ずみられる症状で、病気の進行とともに悪化していきます。
それに付随して、徘徊、失禁、妄想などの症状が現われる場合がありますが、
これらは周辺症状といわれ、どの患者さんにも起こるわけではありません。
人によって千差万別なのが特徴です。
さらに病状が進むと、身体的にも虚弱になり、さまざまな面で介護が必要な状態となります。
普通は発症後、数年から十数年かけて、スロープを下るように徐々に進行していきます。

アルツハイマー病の兆候を見逃すな

残念ながら、アルツハイマー病の根本的な治療法は、まだ見つかっていません。
現在、治療の中心となっているのは、塩酸ドネペジルという内服薬です。
アルツハイマー病では、脳の神経細胞間で情報を伝え合う、アセチルコリンという物質が減少していきます。
この薬は、アセチルコリンが不足するのを防ぐ働きがあり、
症状が軽い早期に服用すれば、病気の進行をある程度遅らせることができます。
また、周辺症状には、抗うつ薬や向精神薬が効果を発揮する場合があります。
さらに、患者さんの精神面に働きかけ、脳の活性化を促す心理療法も行なわれています。 数人のグループで昔の思い出を話し合い、脳の認知機能に働きかける回想法や、
動物との触れ合いのなかから心の安定を図るアニマルアシスト・セラピーは、周辺症状の改善に有効です。
いずれの治療法も、早期に始めてこそ効果が高くなるのは、いうまでもありません。
とくに最近では、アルツハイマー病の前段階ともいえる軽度認知障害を見逃さず、
先手を打って治療を始めることが重要だとされています。
軽度認知障害とは、アルツハイマー病ではないものの、
もの忘れがひどく、年相応とはいいがたい状態のことをいいます。
つまり、健康な状態とアルツハイマー病の中間の段階、ということになります。
日常生活への支障はまだほとんどありませんが、
その一部の人は、後にアルツハイマー病に進行することがわかっています。
しかしその一方で、軽度認知障害の人が適切な治療を受ければ、
アルツハイマー病の発症を防いだり、また発症時期を遅らせられることも、判明してきているのです。
このように、軽度認知障害の段階で発見することは、アルツハイマー病の予防・治療にとってたいへん重要ですが、
激しいもの忘れに気づいても、歳のせいと片づけてしまいがちで、なかなか気づきにくいという問題があります。
このような記憶障害は、本人よりも家族など周囲の人のほうが、変化に気づきやすいといわれています。
例えば高齢の両親などに、下記のような様子がよく見受けられ、
もの忘れが目立つようになったら、ぜひ受診を勧めてください。
また、そう指摘された本人も、あまり深刻に考えず、脳の定期検診のつもりで、一度受診してみましょう。
精神科、神経科、神経内科、
なかでも「もの忘れ外来」などを設けて、専門的に診察している医療機関を選ぶとよいでしょう。
診断は、問診や認知機能検査(簡単なテスト)、画像検査、
また必要に応じて、脳脊髄液の中からこの病気に関連する物質を検出する検査などを行ない、
その結果から総合的に判定されます。

こんな様子には注意

急速に進むアルツハイマー病対策

アルツハイマー病は、発見されてからの歴史が浅く、まだ未知の部分も多いのが実情です。
しかしながら、日本同様、諸外国でも患者さんの数が急増しており、
この病気を克服するための研究が、世界中で盛んに進められています。 例えば、病気が起こる仕組みも完全には解明されていないものの、
症状が現われる10年以上も前から、βアミロイドという異常なたんぱく質が脳に溜まり始めることが判明しています。
その蓄積によって脳の神経細胞が死んでいくものと考えられるようになり、
現在、βアミロイドを標的とした、根本的な治療薬の研究・開発が行なわれています。
まだ認可されている薬はありませんが、
欧米などでは、患者さんに投与して有効性を確認する治験が、実施されているものもあります。
日本でも、昨年から治験が始まっている薬があり、
よい結果が得られれば、4〜5年後には新しい薬が登場するのではないかと、期待されています。
また、最近の国内の動きとしては、全国36か所の医療機関において、
60〜84歳の健康な人や軽度認知障害患者さん、早期アルツハイマー病患者さんの計600人を募り、
早期診断と治療に役立てる臨床研究が開始される予定です。
この病気の研究としては、国内最大の規模となり、その成果にも大きな期待が集まっています。
さらに、国内外で実施されたアルツハイマー病に開する調査から、
生活習慣との関係や、危険因子は何か、逆に何か予防につながるかなどが、明らかになってきています。
例えば、「高血圧、脂質異常症、肥満などの生活習慣病があると
発症する危険が高まるが、なかでも糖尿病は最も危険度が高い」とか、
「青背の魚をよく食べ、EPAやDHAの摂取量が多いと、発症しにくくなる」といった調査結果が示されています。
それらを参考に、アルツハイマー病予防に役立つ生活の心得をまとめたものが、下記です。
もちろん、すべてが有効で、すべての人に当てはまる、というわけではありませんが、
脳の健康を保つためにも、ぜひ心がけてみてください。

脳の健康に役立つ生活の心得
多くの人と積極的に話す

会話は脳のよい刺激となる。
地域の老人会やサークルに参加し、社会活動のなかで会話をすると、さらによい。

青背の魚、緑黄色野菜を多めに摂る

EPA、DHAは脳を活性化してくれる。
緑黄色野菜の豊富なビタミンEや葉酸も、予防に効果的。

生活習慣病は治療しておく

糖尿病、高血圧、肥満などは、危険因子となる。
予防とともに、しっかりと治療しておくことが大切。

30分以内の昼寝を

短時間の昼寝には、予防効果がある。
逆に1時間以上眠ると、発症率が高まってしまう。

楽しめる趣味をもつ

趣味を続けることで、いつまでも興味と好奇心が失なわれず、脳を活性化する。
人生の楽しみは、生きがいにもつながる。

有酸素運動を習慣にする

ウォーキングが最適。 1回20分以上、週2回以上が目標。
脳の血流を高めてくれる。