伊豆に暮らす

伊豆に暮らす 〜健康暮らし応援隊〜絆

脳と腸の意外な関係 過敏性腸症候群(IBS)

通勤時、通学途中、会議中…
同じ状況になると、いつもお腹が痛くなる、下痢をする…
そんな症状が続いていたら、それは近年増えているIBS(Irritable Bowel Syndrome)過敏性腸症候群かもしれません。
新しい治療薬も登場したIBSですが、働き盛りの年代にますます増えています…

ストレスからくる お腹の不調

IBSとは、おもに緊張したり不安を覚えるような状況におかれると、
下痢や便秘などの症状が突然現われる病気です。
大きく分けて4つのタイプがあり、便通異常のほかにも、お腹が張るなどの腹部不快感を繰り返すケースもあります。
これらの症状は、腸の蠕動運動が正常でないために起こるものですが、腸内の検査をしても異常はみられません。
つまりIBSは、腸に炎症やがんなどの器質的な異常がみられないのに、
便通異常や腹部不快感などの機能的な症状を長期間繰り返す、という病気なのです。 現在、患者数は約1200万人と推定されます。
子どもからお年寄りまで年齢を問わず発症していますが、最も多いのは20〜40歳代です。
男性は下痢型が多く、女性や高齢者には便秘型が多くなっています。
症状が現われる状況は人によって違いますが、通勤・通学時の電車の中で起こるケースが、よくみられます。
下痢型の場合は、電車が駅に停車するたびに、トイレに駆けこむという人もいます。
それが続くと、走行時間が長い快速電車に乗るのが不安で、各駅停車しか乗れなくなってしまうこともあります。
このことから、下痢型IBSは「各駅停車症候群」ともよばれます。
こうなると、たかが下痢とは片づけられません。
いつトイレに駆けこむかわからないという不安がつきまとい、
長距離の移動や外出そのものに消極的になったり
仕事や勉強に集中できないというような、生活に支障をきたすことも多いのです。
最近は、この病気の認知度が高くなり、積極的に受診する人も、以前に比べて増えています。
医療機関では腸をくわしく検査するので、ほかの病気が隠れていないかを確かめる、いい機会にもなります。
思い当たる症状があれば、一度消化器内科を受診しましょう。

IBSの症状別タイプ
下痢型慢性の下痢が続く。腹痛を伴うことも多い。
ちょっとした緊張や、食事がきっかけで起こる。
状況によっては1日に何度も起こる。

腸の蠕動運動が活発すぎて、内容物が急速に運搬されてしまう状態
便秘型便意があっても便が出ないか、出ても固い便が少しだけ。
腸の蠕動運動が低下していて、内容物が運搬されない状態
またS状結腸に異常な収縮運動が起こり、便がせき止められてしまう
交替型下痢が数日続くと、次は便秘が数日続くといった症状を繰り返す。
分類不能型上記の分類に当てはまらないケース

問診と検査で診断

IBSの診断は、まず問診でさまざまな質問をします。
受診の際は、症状のパターン/症状はいつから始まったか/排便回数と便の状態/症状がでやすい状況などに加え、
生活習慣/食生活/生活上のストレスについても、医師に答えられるように、まとめておくとよいでしょう。 IBSの特徴として、休日や、何かに熱中している時など、ストレスから解放されている時には症状はでません。
就寝中に、腹痛や便意で目を覚ますようなこともありません。
また下痢が続いても、やせてくることはほとんどありません。
粘性の便は出ても、血便はありません。
ただし、このような症状に対しては、ほかの腸の病気も疑われるため、
血液検査/便検査/腹部X線検査/大腸内視鏡検査などの検査が行なわれます。
医療機関によっては、器質的な病気を除外するために、これらの検査が行なわれることもあります。

IBSのメカニズム

IBSのメカニズム IBSでなくても、精神的なストレスは消化器(胃・腸)の働きに影響をおよぼします。
それは、脳と消化器が、自律神経でつながっているからです。
脳はストレスを認識すると、その信号を、自律神経を通じて腸の神経に伝えます。
IBSは、この信号によって、腸の蠕動運動が活発になりすぎたり
低下するなどの機能的な異常が起こり、下痢や便秘などの症状が現われるものです。 また、このような便通異常は腸に刺激を与え、
その刺激がストレスとして、逆ルートで脳に伝えられます。
すると脳は、これもまたストレスとして腸に伝えるという、悪循環が生まれます。
この悪循環はIBSの特徴で、すでに腸が過敏な状態になっているため、
脳から送られるストレスの信号が、通常よりも腸に伝わりやすいのです。
さらに最近は、腸の蠕動運動に、
腸内のセロトニンが関係していることがわかりました。
セロトニンとは、神経細胞から神経細胞へ情報を伝達する神経伝達物質のことです。
「脳内物質」といわれることもあり、
うつ病や不安障害にも深く関わっているので、聞き覚えがある人もいるでしょう。
ただし、ここでいうセロトニンは、脳ではなく腸内のセロトニンです。
実は、体内にあるセロトニンの約90%は、腸に存在しているのです。
本来セロトニンは、腸の蠕動運動を調節しています。
食べ物が腸に入ってくると、腸の壁にある細胞からセロトニンが分泌され、
腸を刺激して、食べ物を下方に運ぶための蠕動運動を活発にします。
そして、このセロトニンの分泌量は、脳が受けるストレスによっても左右されると考えられています。
IBSの下痢型は、腸にストレスの信号が送られることで、セロトニンの分泌量が増加し、
過剰に蠕動運動が起こることが原因だとわかったのです。

自分に合った方法であせらず治療

下痢型IBSにセロトニンが関与していることから、
このセロトニンの作用をブロックする薬「セロトニン3受容体拮抗薬」が開発されました。
日本では2008年に発売され、IBS治療に効果が期待できると注目されています。
ただし、適応は下痢型に限られ、現段階では男性にのみ処方されます。
このほか、IBSにはさまざまな治療薬があり、症状に合わせて選ばれます。

高分子重合体

便の水分量を調節する。

消化管運動調節薬

自律神経に作用して消化管の運動を調節する。

乳酸菌製剤

腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整える。

止痢薬

下痢を止める。

緩下剤

便秘を改善する。

抗コリン薬

腹痛を抑える。

心理的な症状が強いケースでは、抗不安薬や抗うつ薬を処方したり、心理療法によって改善されることもあります。
また専門医のなかには、桂枝加芍薬湯という漢方薬の効果を、高く評価している医師もいます。
しかし、IBSの治療でもっとも重要なのは、食生活と生活習慣です。
食生活の注意点は、症状によって多少異なりますが、理想的な生活習慣は共通です。
医師のアドバイスにしたがい、症状が良くなっても、再発防止のために習慣にしていきましょう。 IBSは、一度何らかの原因で腹痛や下痢を起こした経験をすると、それがもとでお腹が敏感になり、発症します。
その原因とは、たいていは精神的なストレスですが、過労や暴飲暴食などの場合もあります。
また、急性腸炎を発症したあと、下痢や腹痛が慢性化したという例も少なくないことから、
最近は、腸炎はIBSの引き金になるという説も有力です。
いずれにしても、IBSを一度発症したら、ストレスの悪循環を断ち切ることが必要ですが、
これはなかなかむずかしい問題です。
ストレスを消し去ることは不可能ですから、
避けようとせず、ストレスに向き合って、コントロールすることを心がけましょう。