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誤解していませんか…? 脳腫瘍という病気

「脳腫瘍」と聞くと、皆さんはどんな病気と思われるでしょうか。
「特殊な病気」?「不治の病」?
実は、脳腫瘍は現在年間10万人当たり約10人が発症しており、発症年齢は乳幼児から高齢者まで、幅広くみられます。
しかもその発症数は、増加傾向にあります。
しかし、脳腫瘍の5年生存率は徐々に上がっており、発症しても必ずしも悲観する病気ではなくなってきています。
誤解されていることが多い脳腫瘍という病気を正しい知識で見直してみましょう。

さまざまな種類があります

部位による脳腫瘍の種類 脳腫瘍とは、頭蓋骨内にできるさまざまな腫瘍の総称です。
頭蓋骨内には、脳のほかにも、
脳をおおう膜(硬膜、クモ膜、軟膜)、
血管、脳から出る神経、下垂体などの内分泌器官など、
さまざまな組織が収まっています。 それらにできる腫瘍は、それぞれの組織によって性質が異なるため、
すべて種類分けされています。
したがって、頭蓋骨内にできる腫瘍は非常に多くの種類になり、
その数は100種類以上にのぼります。
発生率が高い腫瘍は、そのなかの一部ですが、
それでも10種類余りもあります。
そのため、これらを総称して脳腫瘍とよんでいるのです。
脳腫瘍には、「原発性脳腫瘍」と「転移性脳腫瘍」があります。
原発性脳腫瘍とは、初めから頭蓋骨内に発生する腫瘍で、転移性脳腫瘍は、他の部位のがんが脳に転移したものです。
冒頭で述べた、年間10万人当たり約10人という発症数は、
原発性脳腫瘍の数で、これは毎年約1万人が発症していることになります。
脳腫瘍には、良性と悪性がありますが、転移性はどれも悪性の腫瘍です。
原発性は、腫瘍の部位によって、悪性と良性がたいてい決まっています。
またそれぞれの部位によって、発生しやすい年齢や男女差もあります。

おもな原発性脳腫瘍
腫瘍の種類発生場所悪性度備考
神経膠腫
(グリオーマ)
脳そのものに発生する多くが悪性最も発生率が高い。
神経膠腫のなかでも、さらに種類分けがある。
髄膜腫脳の膜に発生する良性比較的女性に多く発生する。
進行がゆるやかで、症状がでにくい。
下垂体腺腫下垂体の前葉に発生する良性ホルモン分泌異常をきたすことがあり、
脳腫瘍の症状と気づきにくいことがある。
神経鞘腫神経を包んでいる鞘に発生する良性聴神経に発生しやすく、
聴力低下、耳鳴りなどを起こしやすい。

典型的な症状があります

脳腫瘍では、良性か悪性かにかかわらず、進行すれば症状が現われます。
発生する部位や大きさなどによって、症状やその現われ方はさまざまですが、
典型的な症状といえるものもいくつかあります。

慢性的な頭痛

とくに起床時に激しい頭痛を感じ、痛みは徐々に弱くなる。
進行するにしたがって、常に持続するようになる

吐き気、嘔吐

突発的に嘔吐することがある。
いったん嘔吐すると、しばらく楽になることも多い

けいれん発作

てんかんに似た発作が起こる

このような症状は、頭蓋骨で密閉されている頭蓋内の圧力が高まることで起こります。
腫瘍が大きくなっていくと、腫瘍自体が周囲を圧迫するだけでなく、
頭蓋内を流れる髄液の流れもさまたげられます。
すると、組織の間に髄液がたまってしまい、頭蓋内の圧力が高くなって脳全体が圧迫されるのです。
どの部位に腫瘍ができても、進行するにつれて頭蓋内圧は高くなるので、
これらの症状は共通してみられるものです。 このような特徴的な頭痛や嘔吐、
あるいは大人になって初めててんかんのような発作を起こした場合、
脳神経外科などの専門医で、早期に検査することをおすすめします。
このほか、腫瘍の部位によっては、次のような症状が先にみられることがあります。

視覚異常、手足のまひ・しびれ、聴力障害、
記憶力・判断力の障害、失語症、人格の変化、顔つきの変化、無月経

また脳腫瘍は、精度が高くなったCT(コンピュータ断層撮影)検査と
MRI(磁気共鳴画像)検査によって、ほぼ100%診断が可能になっています。
最近は、脳ドックでMRI検査を受けて、初期の脳腫瘍が見つかることもしばしばあります。

治療法は3本柱です。

治療法は、手術療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤)の3本柱が基本です。
どの療法も、技術や性能が以前より格段に進歩し、
患者さんの負担が少ない、効率的な治療ができるようになりました。

手術療法

腫瘍の摘出手術は、「ナビゲーションシステム」の導入によって、
より正確で安全に行なえるようになりました。
ナビゲーションシステムとは、
手術前にCT検査やMRI検査によって撮影した画像情報を、コンピュータに取りこみ、
手術中に、腫瘍の場所、手術器具の位置などを表示させるシステムです。 いわゆる「カーナビゲーション」と同じ発想で、
車の道案内をするように、医師が持つ手術器具を、腫瘍の部分に導く補助をする装置です。
肉眼では見えにくい位置や範囲などを、正確に把握しながら切除できるので、
手術後の後遺症を最小限に抑えられるようになりました。
このほか、手術中に患者さんを一時的に麻酔から覚まし、
後遺症がでていないことを確認しながら行なう「覚醒手術」や、
おもに下垂体腺腫に適用される「内視鏡手術」が行なえる施設もあります。

放射線療法

現在は2種類の放射線治療が、腫瘍のタイプによって使い分けられています。
定位放射線治療では、
「ガンマナイフ」や「サイバーナイフ」という装置が使われる施設も増えています。
放射線治療でありながら、
まるでメスで切り取るように精密な治療ができることから、その名がついています。

化学療法

脳の毛細血管には、薬剤が入りにくい構造(脳血管関門)があるため、
脳腫瘍では、抗がん剤があまり有効ではありませんでした。
しかし現在は、とくに悪性腫瘍に対して有効な、新しい抗がん剤ができました。
この薬は副作用が少なく、長期間服用しやすいという特長があります。

このほか、免疫力を利用した「免疫治療」を行なえる施設もあり、
「遺伝子治療」も研究が進むなど、今後も脳腫瘍の治療は、ますます進歩していくことが予想されます。

治療方針はさまざまです。

脳腫瘍は、良性の腫瘍でも命にかかわる場合があります。
腫瘍の部位や大きさによって、圧迫している部分の脳に
大きなダメージを与えるようなケースでは、摘出を目標とした治療が必要です。 可能であれば、手術によって腫瘍を完全に取り除くことが理想的ですが、
これは「腫瘍と正常な組織との境界がはっきりしている」などの条件が合わなければ困難です。
とくに神経膠腫(グリオーマ)は、組織内にしみこむように広がるため、正常な脳との境界がはっきりしません。
実際は脳腫瘍の多くは、正常な脳の組織をまったく損傷せずに摘出することがむずかしいケースです。
そのように、取りきれなかった腫瘍に対しては、
放射線療法や化学療法を組み合わせて、小さくしたり消滅させたりします。
ただし、小さい段階の良性の腫瘍ならば、安全に摘出でき、多くのケースが治癒しています。
また、このような腫瘍で、患者さんが高齢かつ症状が現われていない場合は、経過観察をすることもあります。
腫瘍の性質や進行度によっては、放射線療法や化学療法を単独で使って、治療できることもあります。
つまり、早期発見が肝要という点は、脳腫瘍も例外ではないということです。
脳腫瘍は予防がむずかしい病気なので、
これまでになかった異変があったら、専門医を受診することが重要です。
積極的に、脳ドックを受けてみることもよいでしょう。