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小さな沈黙の臓器… 卵巣の腫瘍

卵巣は、子宮の両わき、やや後方に、一つずつあります。
閉経前の成人女性の卵巣は、親指の頭ほどの大きさで、閉経するとさらに小さくなっていきます。
そんなに小さいにもかかわらず、卵巣は身体の中で、最も腫瘍ができやすい臓器です。
しかし、身体の奥にある小さな臓器のため、
腫瘍ができても非常に見つかりにくく、目立った症状も現われないのが特徴です。
そんな卵巣は、「沈黙の臓器」ともいわれています…。

卵巣の腫瘍

卵巣では、ヒトのもととなる卵子が育てられます。
卵巣の中には、もともと数百万個もの原始卵胞が存在し、
それが周期的に数個ずつ成熟して、卵子となり、排卵されます。
そのように卵子が成熟するまでには、盛んに細胞分裂が行なわれます。
そして、卵巣の壁は排卵する時に傷つけられるので、そのたびに修復されています。 このようなことを繰り返す過程では、腫瘍ができる可能性が非常に高くなり、
そのため卵巣は、多種多様な腫瘍ができやすい臓器なのです。
卵巣は左右にあり、腫瘍はたいてい片方にできますが、両方に発生することもあります。
卵巣の腫瘍は90%が良性ですが、なかには卵巣がんのような悪性もみられます。
また、良性であっても、途中から悪性に変化することもあります。
卵巣の腫瘍を大きく分けると、のう胞性と充実性の2種類になります。
のう胞とは、袋状の中に液状成分がたまってはれているもので、やわらかい弾力がある腫瘍です。
のう胞性腫瘍は一般に、卵巣のう腫といわれています。
卵巣の腫瘍の多くは卵巣のう腫で、そのほとんどは良性です。
充実性は、こぶのような硬い腫瘍で、良性、中間型、悪性があります。
悪性はつまり、卵巣がんです。
では、代表的な卵巣の腫瘍を、それぞれみていきましょう。

卵巣のう腫

卵巣のう腫は、次の3種類が代表的なものです。

漿液性のう胞腺腫

卵巣のう腫のほとんどを占め、10〜30代の若い世代に多いタイプです。
のう胞の中は、透明なサラサラした液体です。

粘液性のう胞腺腫

のう胞の中は、ネバネバした粘液です。
腫瘍全体のなかで、最も巨大化する可能性があるタイプで、
大きいものは大人の頭ほどになることがあります。
そのため、のう胞が破裂することもあり、
すると粘液が腹腔内に散乱し、腹膜炎などを起こすケースがあります。

皮様のう腫

のう胞の中は、ドロドロした脂肪に、髪の毛、歯、骨などが混ざっています。
これらは、卵子のもとである胚細胞が変化し、
発育したために現われると考えられています。

特徴と治療 卵巣の腫瘍が大きくなると起こりやすい症状 卵巣のう腫は、原因がはっきりわかっていないため、
女性なら誰でもなる可能性があるといえます。
とても大きくなるのが特徴で、
小さいうちは自覚症状がありませんが、
にぎりこぶしほどの大きさになると、
右図にあるような症状に気づくことがあります。
卵巣のう腫はほとんどが良性ですが、
大きくなると悪性に変化する場合があります。
また良性であっても、周りの臓器を圧迫したり、
「茎捻転」を起こして危険な状態になることもあるのです。
したがって、100%良性で小さい腫瘍に対しては、
まず経過観察をし、大きい腫瘍になったら、
茎捻転や卵巣がんの予防のために、摘出手術を検討します。
そのため、腫瘍が見つかった時点から、
定期的に検査をしていくことが必要です。

卵巣チョコレートのう胞

卵巣チョコレートのう胞は、卵巣に子宮内膜症が起こるためにできるのう胞で、
厳密には、卵巣の腫瘍には含まれません。 子宮内膜症とは、周期的に厚くなってはがれ落ちる、
子宮内膜と同じような組織が、子宮以外の場所に現われる病気です。
通常は子宮内で起こる月経が、子宮以外の部分で起こってしまうのです。
卵巣に子宮内膜症ができると、月経で出血するたびに、のう胞に血液がたまり、
古くなった血液は、泥状の黒っぽいチョコレートのような液体となっていきます。
ここから、チョコレートのう胞という名がついています。

特徴と治療 卵巣チョコレートのう胞は子宮内膜症なので、
上図のような症状のほか、強い月経痛を伴うことがよくあります。
月経痛で受診し、のう胞が見つかることも少なくありません。
卵巣チョコレートのう胞を放置すると、卵巣が周囲の組織に癒着したり、
月経のたびにのう胞が大きくなって破裂することもあります。
がんが発生したり、茎捻転を起こす可能性もあるため、完治するには、摘出手術が必要です。

卵巣がん

充実性腫瘍の7〜8割が、卵巣がんです。
今、卵巣がんは、急速な増加傾向にあり、注意が呼びかけられています。
現在、年間でおよそ8千人の女性に、卵巣がんが見つかっています。
卵巣がんは、一生を通した排卵回数が多いほど、リスクが高まると考えられ、 1.初潮が早く、閉経が遅かった人
2.出産経験がない、または少ない人
3.卵巣がんになった家族がいる人
4.子宮内膜症がある人
5.動物性脂肪の多い食生活の人
がなりやすいといわれています。
また、卵巣がんは幅広い年齢で発症しますが、とくに多くみられるのは40、50歳代です。

特徴と治療 卵巣の腫瘍 診断のための検査 卵巣がんも良性の腫瘍と同様、
大きくなると上図のような症状がでることがありますが、
初期には無症状が多く、なかなか発見できません。
たとえ症状がみられても、
下腹部が出てきたら「太っただけ」と考えていたり、
頻尿や便秘があっても、
受診するほど心配しなかったりということが多いのです。
しかも卵巣がんは、進行が早く
転移しやすいという特徴もあります。
したがって、婦人科のがんのなかでは、
最も死亡率が高いがんとなっています。
治療法は、進行の程度、がんの種類、患者さんの年齢によって違いますが、
手術療法と化学療法を組み合わせるのが一般的です。
卵巣の腫瘍の診断は、
右図のような手順で進めるのが一般的ですが、
良性か悪性かを確定することはとてもむずかしく、
少しでも悪性の疑いがあれば、病巣の摘出手術を行ないます。
これまで述べたように、卵巣の腫瘍の治療は、原則は摘出です。
腫瘍のみの摘出、卵巣ごと摘出、卵管などの周囲を含めた摘出、などの方法があります。
また、開腹手術だけでなく、腹腔鏡下手術もあります。
どの腫瘍についても、今後妊娠を希望するかどうかは、治療方針を決めるうえで重要になります。
治療法を決める際には、自分の希望を医師にきちんと伝えてください。
卵巣の腫瘍は、とてもわかりにくい病気です。
卵巣がんになりやすい条件が当てはまる人だけでなく、
30歳を過ぎたら定期的に、女性は卵巣がんの検査を受けることをおすすめします。
子宮がん検診を受ける時に、卵巣も診察してもらえるように医師に伝えてみましょう。

茎捻転

卵巣は、子宮とつながっている靭帯と、骨盤とつながっている靭帯の、二本の靭帯によって支えられています。
卵巣の腫瘍が大きくなると、その重みによって卵巣が下がり、靭帯も引きのばされます。
すると、卵巣が何かのきっかけで動いた時に、靭帯の根元からねじれを起こすことがあります。
つまり、卵巣がぐるりと回転してしまうのです。 これを茎捻転とよびます。 靭帯は、卵巣をつなぎ止めているだけではなく、血管や神経の通り道にもなっています。
したがって茎捻転が起こると、神経が圧迫されて強い下腹部痛や嘔吐が起こります。
卵巣への血行が遮断されてうっ血し、卵巣が破裂したり壊死することもあります。
茎捻転を起こしたら、場合によっては緊急手術によって、卵巣を摘出する必要があります。
茎捻転は、腫瘍が直径5〜6cm以上になると起こりやすくなりますが、
腫瘍が小さくても起こる可能性があります。